心理士について

①心理士とは

②仕事内容・役割

③活躍の場

④心理士になるには

⑤心理士の収入

⑥心理士の体験談


①心理士とは

 臨床心理学の知識と技能を学習し、習得している者のことです。必要な技能としては、信頼関係を構築するのに必要な「コミュニケーション技能」対象者を見立て、治療的方針・支援方法を定めて介入する「ケースマネジメント技能」問題を組織として解決していく「連携技能」が求められます。

 また、職業倫理についてのしっかりとした知識・理解も求められます。主に求められる倫理問題は以下の3つです。

1)守秘義務の問題

 クライアント(主に患者さん)の情報について、原則として第三者に教えることはできません。ただ関係者からの問い合わせは多くのケースで発生します。そこでどのように対応するのか判断が求められます。判断の材料として、それまでにクライアントと本人についての問い合わせの際はどうするのか話し合っておく必要もあるでしょう。さらに外部と協働・連携をする際もクライエントとどのような内容で外部と繋がるのか話し合っておく必要もあります。

 ただ、明白で切迫した生命の危険がある場合は、本人の意思に沿わなくても、支援者、警察、医師など、協働・連携している者へ通告する必要があり、それを判断する能力が求められます。

2)クライエントとの多重関係問題

 「心理士−クライアント」の関係だけでなく、社交関係・性的関係・友人関係などが存在すると治療段階で、多くの問題が生じます。場合によっては、PTSD様の問題が生じたケースも報告されているようです。こうしたことを防ぐためには、クライエントからの贈り物を受け取らない個人的なことについてクライアントに話さない社交関係を持たないことが大事です。こうした「心理士−クライアント」の関係を維持できる能力も求められます。

3)自身・専門的能力判断の問題

 心理士は自身の能力の範囲と専門的能力の範囲をしっかり見定める能力が問われます。自身の能力の範囲で支援ができるのか、心理士の専門的能力の範囲で支援できる相手なのかを判断し、他の心理士や他の専門職の対応の方がクライアントにとってよいのであれば早い段階でリファーを行うことが求められます。そのため、心理士はアセスメントを行う能力を日々高めていく必要があります。十分な援助を提供するには、一人ひとりのクライアントにあった対応を行うことが必要です。誰が来談しても対応する、同じ対応をする、というのは適切ではありませんし、クライエントに対しての誠意に欠けます。


②仕事内容・役割

 代表的な仕事内容は、心理検査カウンセリングです。

(1)心理検査

 様々な検査をどのような目的で使用するのか、心理士は正しく理解しておく必要があります。対象者の心理的特徴・認知的側面を把握する目的で使用し、それをもとにケースへの介入方法を決め、作業仮説を検討します。さらに、これをクライアントと共有することで、一緒に治療に取り組む姿勢にも繋げます。また、協働・連携しているチームへも、心理学視点からのクライエント理解や特性を他職種に示し、支援方法を検討する材料提供をします。

 しかし、心理検査は客観的なデータを得られるものもあれば、検査者の主観に依存しているものも多くあります。そのため、他の検査とバッテリーを組むなど、対象者を様々な角度から分析する必要があります。また、検査提案から開始、終了するまでの行動に注目することも、対象者へ支援につながる重要なポイントです。例えば、コミュニケーションの苦手さは数値ではわかりにくいものがあります。他にも、言葉の流暢さはスムーズか、物事へのこだわりが強そうか、そういったことが検査中にみられたのか。こうした行動観察も含めて、検査結果をまとめる必要があります。

Ⅰ,心理評定尺度

・抑うつ:「Hamiltonうつ病評価尺度」「Beckうつ病自己評価尺度」など

・不安:「MAS不安尺度」「不安測定検査(CAS)」など

・自閉症スペクトラム障害:「自閉症診断面改訂版」「小児自閉症評価尺度」「自閉症スペクトラム指数(AQ)日本語版」など

Ⅱ,知能検査

【Wechsler式知能検査】

 WISC-Ⅳ(5歳0か月~16歳11か月)、WAIS-Ⅲ(16歳~89歳)

【Binet式知能検査】

 日本では田中ビネー知能検査Ⅴ(2歳~成人)

Ⅲ,神経心理学検査・認知症にかかわる検査

 改訂長谷川式簡易知能評価スケール、MMSE、時計描画テスト(CDT)、Benton視覚記銘検査、Frontal Assessment Battery(FAB)など。

Ⅳ,発達検査

遠城寺式乳幼児分析的発達検査(0~4歳8か月)、津守・稲毛式乳幼児精神発達検査(0~7歳「1~12か月」「1~3歳」「3~7歳」)、新版K式発達検査(0歳~成人)など。

Ⅴ,投映法

 ロールシャッハ・テスト、絵画統覚検査(TAT)、P・Fスタディ、臨床描画法、文章完成法(SCT)など。

(2)カウンセリング

 カウンセリングとは、面接を通してクライアントを支援することです。心理士が行うカウンセリングでは、クライアントに寄り添うということを大切にして進めていきます。そのため、助言や提案はあっても指導は基本的には行いません。それは、クライアントが抱える悩みというのはクライアントが主体となって解決することが重要であり、それについて一緒に考えることが『支援』であり、『寄り添う』ことだと心理士は考えているからです。心理士が主体的になると、クライアントが望んでいることや問題が見えずらくなることが多いからです。しかし、クライアント主体になりすぎても、その人の課題に触れないままであったり、カウンセリングを初めた目的を忘れてしまう場合もあります。また、必要以上に主体的であったり、心理士に対して操作的になる人も多いです。そのため、「枠」というのもカウンセリングでは大切なことです。「枠」というのは、時間・場所・頻度など制限を設けることです。これはカウンセリング開始の初期段階で必ず行います。これによって、クライアントと心理士の双方にとって安心で安全な場となり、話せる環境ができます。環境作りもカウンセリングを行う上で大切なことです。

 カウンセリングで寄り添うためには、クライアントの考えや思いを「聴く」必要があります。そのため、カウンセリングで基本的な技能のひとつとして、「傾聴」というのがあります。これは単に話を聞くというわけではなく、質的に話を「聴く」ということです。以下に、6つのポイントを挙げました。

  • 【注意の向け方】クライエントが話をしているときに、注意を向け続ける。
  • 【姿勢】一定の「聴く姿勢」を維持する。
  • 【表情】クライエントの表情と一致した表情を示す。
  • 【声量・スピード・イントネーション】聞き返されることのないような声量で話をすることができるか。
  • 【言葉遣い】クライエントが理解できる言葉遣いができる。
  • 【傾聴が伝わるための技法を駆使できる】相づち、促し、繰り返し、要約、確認など。

 以上のことをカウンセリングでは注意して進めていきます。その先の治療的アプローチ段階では、認知行動療法、精神分析的療法、来談者中心療法などがあり、それらの療法の技法を用いてクライアント理解を深めながら、臨床実践を提供していきます。


③活躍の場

ⅰ.医療・保健

病院、クリニック、保健所、リハビリテーション施設、老人保健施設など

ⅱ.福祉

児童相談所、児童福祉施設、子育て相談センター、発達相談など

ⅲ.教育

スクールカウンセラー、教育相談所、教育センターなど

ⅳ.産業・労働

企業内の健康管理室、公立職業安定所など

ⅴ.司法・法務・警察

  家庭裁判所、少年鑑別所、少年院、保護観察所など

ⅵ.大学・研究所

  大学、専門学校、研究機関、大学付属臨床心理センターなど

ⅶ.私設心理相談

  個人やグループで運営している心理相談室、カウンセリングセンターなど

 以上が心理士の活躍の場です。雇用形態は様々で、正規職員であったり、契約社員などです。


④心理士になるには

 これからの心理士には国家資格が求められます。公認心理師という資格です。平成27年9月9日に国会で成立し、9月16日に公布されています。心理士という呼び方も心理師に変わるようです。これか心理師として働くためには、この資格が必要になってくると思います。資格を取得するためには資格試験を受験する必要がありますが、受験資格の条件については只今議論をされています。

 さらに、現在の日本で心理士として信頼性高く働くためには、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施している資格試験に合格する必要があります。そのためには、協会が指定している大学院を修了する必要があります。ただこの資格は、心理士として絶対に必要な資格ではないため、必ずしも必要ではありません。国家資格でもありません。しかし、この臨床心理士という資格を持つ者を求める機関が多く、持っておけば心理士としての幅を拡げ、活躍しやすいと思われます。


⑤心理士の収入

 収入に関しては年収200万から800万以上と幅広いようです。それは、心理士という職業は、人によっては幅広く活躍できるので、収入も人それぞれで幅広いようです。また、医師や大学教授が兼務できる職業でもあります。なので、雇用形態やどこに所属するかによって収入は大きく変わってきます。そのなかで、大きな収入を求めやすいのは、スクールカウンセラーと言われています。その理由は、スクールカウンセラーは時給制が多く、時給の平均金額は5,000円だと言われています。さらに、時間の都合はつきやすく、他の業務も兼務しやすい仕事だと言われています。講演の依頼などが入れば収入は大きく増えるでしょう。しかし、実力がないと仕事は回ってきません。新人時代は辛い仕事かもしれません。

 病院、企業、公務員であれば、平均して350万〜600万と安定した収入が得られやすいかもれません。

【心理士4年目の給与明細です】

心理士の給与明細


⑥心理士の体験談

【心理士をしてて良かったこと】

クライアントを通して自分が成長できること、そしてそれを実感できることです。カウンセリングや心理検査をして得られる経験は必ず次のケースに繋がります。失敗をした時も、上手くいった時も、その理由を検討しながらケースに望んでいると、自分が成長していきます。支援をするためには、心理士が成長しないと支援はできません。今まで考えたこともない発想や捉え方をクライアントに教えられることも多く、段々と心理士としての幅も大きくなります。考え方というのは人生を豊かにさせる大切な要因だと日々の臨床で感じています。心理士というのはクライアントの成長と自分の成長も実感できる喜びが感じれる職業だと思います。


【心理士をしてて困ること】

出費が多いことです。心理士というのは臨床経験が問われるので、常に勉強していかねばなりません。そのため、学会や研修会に出席する機会が多いでしょう。学会参加費、研修受講料、交通費など必要です。そうなってくると、まとまった休日もなかなかないです。さらに、カウンセリングが主観的にならないように、スーパーヴァイズを受け、他の心理士とそのケースについて定期的に検討してもらうことも必要です。このスーパーヴァイズも料金が発生します。こうした多くの出費が心理士にはあります。


【心理士をしてて辛いこと】

カウンセリングの内容は辛いものと向き合わなければなりません。当然、それは辛くしんどい作業です。目の前のクライエントが苦しみ姿も見なければなりません。人間の汚い部分に目を向けないといけないことも多いです。しかし、そこで一緒のものを見つめ、体験し、それについて一緒に考えることは心理士にしかできないことだと思います。


【心理士に向いている人、苦労する人】

人を支援したいと言う気持ちがあれば心理士にはなれるでしょう。しかし、心理の世界は独特であるため、苦労する人はいると思います。上述したとおり、心理士は心理士になっても勉強や研究の毎日です。心理学が好きな人でないと務まらない職業といえるかもしれません。また、「待てない人」という人も苦労するかもしれません。時間や会話ではなく、その人が抱えているものに対してその人自身で答えを出すまで待てない人、一緒に迷えない人は苦労すると思います。人間の心は複雑であり、一人ひとり異なります。心理士はそれに付き合うことも必要です。あと、「セルフケアが苦手な人」は苦労すると思います。クライアントの悩みを心理士が抱えることは重要でそこから分析も始まります。気持ちをどう切り替えていくか、自分を自分で支える力もある程度必要なので、自分自身で精神的健康をある程度保てない人は苦労すると思います。

心理士という職業は少し変わっていますが、人の大切な部分を大事にする非常にやりがいのある職業だと思います。

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