ひきこもりと精神科医療

① ひきこもりの定義

② ひきこもりの統計・疫学

③ ひきこもりとニート

④ ひきこもりの定義

⑤ ひきこもりの背景

⑥ 精神障害と社会的背景

⑦ ひきこもり支援のための見立て

⑧ 不登校・ひきこもりの諸段階

⑨ ひきこもりの支援


① ひきこもりの定義

・ひきこもりは一般人口の1〜3%に生じる現象。

・開始年齢の平均は10代後半で、中学生以前に始まるものも20〜30%存在する。

・不登校経験を持つ等の学校関連のものが40〜60%存在する。

半数で精神疾患が併存する。

・義務教育年代に適切な支援を受けた子どもは70〜80%が数年後には適応状態にあり、支援を継続することが適応状態改善に有用である。


② ひきこもりの統計・疫学

・ひきこもりの平均開始年齢は22歳

・男性に多い

・平成22年時、狭義の意味でのひきこもりは24万人、準ひきこもりを合わせた広義の意味でのひきこもりでは70万人いる(内閣府)


③ ひきこもりとニート

ニート(NEET):Not In Education,Employment,or Training

 ニートとは、仕事をせず、失業者として求職活動もしていない非労働力のうち、15〜34歳で卒業者かつ未婚で、通学や家事を行なっていない者です。

 ニートは、ひきこもりとは違うため、支援の必要性の深刻度という視点から用語を使い分ける必要があります。


④ ひきこもりの定義

 様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職員を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしてもよい)を指す現象概念である。

 なお、ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが、実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くない。


⑤ ひきこもりの背景

・適応障害

・不安障害(社交不安障害、パニック障害など)

・気分障害(うつ病、気分変調症など)

・強迫性障害

・パーソナリティ障害 ・統合失調症

・思春期妄想症など

・広汎性発達障害

・注意欠陥・多動性障害

・知的障害

 ひきこもりの原因が精神障害にあるとしているわけではありません精神障害の種類も様々であり、対応方法が異なります。

 精神障害が背景にあるとき、薬物治療や心理療法、その他の専門的な対応が有効なものを見逃さず、適切な支援につなげるための第一歩です。

→「精神障害」と「社会的背景」の両面から支援を考えていくことが重要です。


⑥ 精神障害と社会的背景

【精神障害の特性】

・対人関係の苦手さ、社交不安

・こだわりや完全主義・完璧主義

・傷つくことへの恐れ(自己愛の強さ)

・無為自閉、抑うつ感情

・自尊心の低さ

・適応能力の低さ

【社会的背景】

1. 情報化社会

  対人関係の苦手さ、傷つきやすさを持っている人には、現実社会と関わる不安や劣等感が情報によって強化される。

2. 格差社会、勝ち組、負け組

 情報化社会、特にインターネットの普及によって格差を敏感に感じる社会になって、勝ち組・負け組がはっきりとわかる(目立つ)ようになりました。

 社会も高学歴化が進み、高学歴かどうかで待遇に大きな差が生じるようになってしまいました。失業率の上昇、就労・就活問題なども格差に大きく関わってきています。

 格差を肌で感じる機会が増え、傷つくこと、傷つけられることに過敏になってしまいます。

3. 多様にみえて、実際は画一的な社会

失敗すると未来が見えないようにみえる

・知識・学力だけでは生きづらい

・知識・学力はあるけれど、対人関係の苦手さや傷つきやすい自己愛を抱えている(そうした特性を持つ精神障害が背景にある)。

 こういった特徴があるだけで、社会に出て行きづらくなります。

 精神障害それ自体のために、社会に出られないのではなく、「傷つきやすい」「上手に他人と交流できない」という症状や障害特性のために苦しんでいる人たちがいます。

 ひきこもりは、育て方の問題や親の責任ではありません。ある程度の精神障害が背景にあると、その特性によって、「思春期課題の克服」が困難になるとともに、現代の社会的背景の特性によって、さらに困難さが拡大しているものと考えられます。

 思春期課題とは、母親からの別離・自立や自分探し・自分づくりです。


⑦ ひきこもり支援のための見立て

 ひきこもりの背景にある「メンタルヘルスの問題」と「本人を取り巻く環境の問題」とのあいだで、何が本人を苦しめているのかを見立てることが必要かつ重要です。

 ここで注意していただきたいのは、「診断」ではなく「見立て」ということです。

 精神科、心療内科にかかって「診断」を受けることですべてOKではありません。診断だけがあって、病名だけが独り歩きする危険性があります。病名がつくと家族はのめり込みやすいです。また、薬を飲めばなんとかなるのではないかと思い込んでしまいます。

 診断をひとつの手がかりに、本人への支援が組み立てられなければ適切な対応がとは言えません「診断」とは、病気を探り、病名をつけ、病気の治療をします。「見立て」とは、困難を生じているところを見つけ、困っている人の支援につなげていきます。「診断」と「見立て」の違いは、病気をみるのではなく、人をみることです。


⑧ 不登校・ひきこもりの諸段階

hikikomori

【引用】ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン

・準備段階

 本人の内面では葛藤がありますが、周囲からはひきこもりの経過が始まっているとは分かりにくい段階です。このまま適切な支援を受けるなどの理由でひきこもりに至ることなく終わる子どもや若者は多いです。

・開始段階

 激しい葛藤が目に見える形であらわれ、不安や焦りを伴う情緒的動揺や気分の落ち込みが目立つ時期です。幼児のように親にしがみつくかと思うと、手のひらを返すように暴力的な言動を示すような不安定さとを同時に持つ時期です。

・ひきこもり段階

 開始段階の不安定さが治まっていき、比較的穏やかな日常が過ぎていきますが、ふとした拍子に言動の幼さが目立ちます。

・社会との再会段階

 実際の戻っていく社会生活とひきこもり状況との間に存在し、その中間的な時間と場で、十分に配慮された支援が必要な段階です。


⑨ ひきこもりの支援

 「見立て」から「自立」へ

1.家族からの相談(出会い・評価段階)

 見立てと家族支援を行います。

2.個人的支援の継続(個人的支援段階)

 訪問などして、家族支援や個人の背景に合わせた面談、治療を行います。本人・家族の抱えてきた苦しさ・つらさを理解し、受けとめます。そして、一緒に考えていくことができることを伝えます。

3.個人から集団へのつなぎ(中間的・過渡的な集団との再会段階)

 個人支援や青年期の集いなどで集団グループの活動を利用した集団療法を行います。

4.社会参加へのつなぎ(社会参加の試行段階)

 居場所の提供として、就労支援や集団グループでの活動を行います。本人・家族が自分の生き方を見出していくよう支援します。

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精神科(レンタングル大)
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