高齢者の不眠

 高齢化が進むに連れて増える、不眠の問題。

 現在処方されている睡眠薬の7割以上が高齢者に処方されています。

 睡眠薬の中でも、ベンゾジアゼピン系(BZ系)薬剤は注意が必要で、高齢者の転倒や骨折、認知機能低下などのリスクを高めることがわかっています。

 ベンゾジアゼピン系薬剤の注意点などをまとめました。


【高齢者で注意しなければいけない理由】

・若年者に比べ、高齢者ではBZ系薬剤に対する感受性が亢進している。

・薬物代謝能(肝機能・腎機能)が低下しているため血中濃度が上昇しやすい。

認知機能低下や転倒リスクが上昇する。

高齢者が転倒すると骨折する可能性が高い。

特に大腿骨を骨折する割合は高く、大腿骨骨折の場合、治療(手術)を行っても、高率でADLが1ランク以上落ちる。

・依存形成しやすい。(すぐに依存症になる)

睡眠薬の処方率は、男女ともに加齢に伴い上昇しますが、
日本老年医学会、日本睡眠学会では高齢者にBZ系薬剤を投与することは推奨されていません。


 【高齢者の睡眠薬は、非BZ系薬が第一選択】


ゾルピデム(マイスリー)、ゾピクロン(アモバン)、エスゾピクロン(ルネスタ)、ラメルテオン(ロゼレム)、スボレキサント(ベルソムラ)など。

ただ、BZ系薬剤は、高齢者の睡眠薬で効果があったというデータが多いのも事実です。使用する際には十分注意してから(患者さんにしっかり説明してから)使用するようにしましょう。

 高齢者の不眠について、不眠の訴え=不眠症ではないことを意識する事が重要です。慢性的な不眠を訴える患者さんのうち、原発性不眠症は、2割程度と言われています。夜間の頻尿、疼痛、呼吸困難、認知症、独居、不安など様々な因子が不眠に影響している可能性があります。

 また、『8時間寝ないといけない』、『熟眠出来ていない』、『途中で目が覚めるから睡眠の質が悪い』などと固執し、それらが満たされないことで焦ったり不安が強まったりしていることもしばしばあります。そうした患者さんには、年をとるにつれて、睡眠は浅くなり、睡眠時間が短くなることを説明し、中途覚醒も受け入れて、8時間睡眠を目指さないように指導してください。

  三島和夫先生が、保健医療科学 2015 vol64でまとめられているのですが、非常に勉強になるので読んでみて下さい。


【認知症高齢者の睡眠問題と対策】

①睡眠時間

・必要な睡眠時間には大きな個人差がある。

8時間睡眠を目指さない。

・若い頃より睡眠は浅くなり睡眠時間は大幅に短くなる。

・若干の中途覚醒は受け入れる。深追いしない。

②就床時刻

・就床時刻が早すぎ、床上時間も長すぎる、若干の遅寝と早起きが効果的

③嗜好品

・夕方以降はアルコール、カフェイン、ニコチンを控える

④生活環境

・日光を浴びる(家庭照明だけでは体内時計にとっては不十分)

・就寝環境を整える(室温や湿度による中途覚醒も多い)

・施設では気の合った同室者を選ぶ

⑤鑑別診断

・不眠あり=不眠症ではない。睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、不規則睡眠覚醒型、過眠などの鑑別が必要。

⑥合併疾患

・疼痛、掻痒、頻尿などへの対処(夕方以降の水分を控える)

⑦薬物療法

・認知症の睡眠障害には薬物療法が奏効しにくい。短期勝負が原則。

・非薬物療法や生活指導を併用する。

・コリンエステラーゼ阻害剤は朝に服用。

・睡眠を阻害する薬物、眠気をもたらす薬物の調整

 三島和夫:保健医療科学 2015 vol64 No1 p27-32 より引用

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