多職種カンファレンス

【多職種カンファレンス】

 精神病の患者さん、認知機能の低下や日常生活動作(ADL)が低下した高齢者患者さんについて、臨床問題だけでなく、介護の問題が非常に重要となります。入院治療後、介護やお世話の問題で自宅への退院が困難であったり、地域での迷惑行為などにより自宅へ戻ることが不可能となったり、施設への入所が断られたりすることは精神科の臨床では頻繁に見られる光景です。また、地域支援者の理解が必要となることも多く、そのため医師のみで解決出来ることが少なく、介護保険サービスや障害福祉サービス、家族支援の導入など様々な支援が必要となるため、家族を含めた多職種カンファレンスが必要不可欠です。多職種カンファレンスにおいて重要なことをまとめました。

(1)共通の目的、協働意思の確認

 カンファレンスの前提として、カンファレンスの目的・必要性を確認することが重要です。なんとなく話し合いを行うだけでは問題は解決しません。

・目標の設定

・問題点の明確化

・ニーズ分析

・支援計画

・情報共有

・共通の援助目的と役割分担の確認

を行うようにしましょう。


(2)医師としての役割をわきまえる

 医師は、カンファレンスで患者の医学的判断について責任をもつべきです。精神科患者さんや高齢者の患者さんは、社会背景などが複雑に関連していることも多いです。医学的判断は全ての方針の前提となります。

 そのため、医師の発言内容に多くの職種が同調してしまう、あるいは反対出来なくなることがあるため、医師はカンファレンスの冒頭から意見を述べることは控えた方が良いです。カンファレンスのテーマが医学的側面の強い内容であれば、医師が多くをコメントせざるを得ないことがありますが、その際も客観的事項を中心に述べ、主観的な内容を少なくします。また、事実と意見を分けることが重要です。

 精神病の患者さん、高齢者の患者さんは、医学的以外の要素が求められるので、医師の発言のみが重要視されないように留意した方が良いです。


(3)患者さんが本音を言えているか気をつける

 患者さんの中には、自分の意見を表出せず、周囲の意見に委ねてしまう方がいます。カンファレンスが終わった後に、『先生、実は・・』ということもあります。実際、私の経験でも、カンファレンス中、家族が施設入所を希望したため、本人も雰囲気に押され流れに乗らざるを得なくなり、その場では施設入所しますと言ってしまい、その後泣きながら施設入所を拒否され、入所が中止となったことがあります。そうなるとカンファレンスの意味がないので、必ず患者さん本人が自身の意見を言えるよう努力しましょう。例えば、あまり議論が進んでいない最初の段階で、『ご本人としての希望を教えてください』などと、尋ねてみるのも良いと思います。

 また、カンファレンス以外に、患者さんと一対一で話す場を設け(普段の回診の時でも良いです)、他者から強制されない自発的な発言を聞く努力が必要です。患者さんのことなので、患者さんの言葉で伝えてもらうのが一番良いのですが、事情により患者さんの言葉で伝えることが困難な場合は、代弁者を立てます。


(4)家族の患者への関わり方を見極める

 患者さんの退院先(自宅、施設、病院など)について、非常に重要な役割を担うのが家族です。家族が方針決定プロセスの鍵を握っていると言っても過言ではありません。患者さんが自宅退院したいと主張しても、家族が無理だと判断し、施設入所になることはしばしば臨床の現場で見られます。家族が患者に対して、どう関わっているべきか注意が必要です。よく見られるパターンとしてまとめてみました。

①患者さんを自分のことのように同一視して関わる家族

 カンファレンスでも、介護上の問題などについて自分のことのように捉え、感情的になったり、無理な計画を実行しようとしたり、自責的となったりすることがあります。家族自身が主介護者である場合は、自分自身を追い込んでしまい、結局退院後に介護疲れなどで共倒れしてしまうこととなるので注意が必要です。同一視し過ぎないよう、あまり背負いすぎないよう、医療者は注意をしながらフォローしていく必要があります。

・譲れないポイントの確認を行うこと

・優先順位をつけてもらうこと

・一般的な福祉サービスについて情報提供を行うこと

 が重要となります。

②患者さん本人ではなく、家族・介護者本位で関わる家族

 患者さん本人のためでなく、家族や介護者本位の考えをカンファレンスで発言し、介護保険やPSW、施設などに一任する(丸投げする)パターンです。家族が遠隔地に所在する場合もこのパターンとなります。また、長年にわたる介護でバーンアウトした(燃え尽きた)家族や、家族内調整などを面堂に考えたりするといった、血縁者の棄老的な考えが見られたりすることもあります。燃え尽きた家族に対しては、労いと共感の姿勢を示しながら、一緒に考えて行きましょうという姿勢で冷静な判断を促しながらカンファレンスを勧めて行きましょう。棄老的な考えについては、完全に拒絶するのではなく(拒絶するとカンファレンスの進行自体がストップしてしまうことになるため)、何故そういう考えに至ったかを傾聴し、理解・共感をしながら少しずつ考え方を修正していくうようにしましょう。家族がどこまで援助・支援できるか確認を行うことも大切です。

③御家族自身の理解力・判断力が十分でない家族

 患者さん自身がご高齢である場合、家族も高齢であることがしばしばあります。御家族も認知症を患っていたり、精神障害がある場合も多々あります。そうした場合にも、カンファレンスは積極的に開くべきであり、その場合は、PSWや地域福祉の方など多方面に働きかけて、地域で支えていく方針とした方が良いです。また、家族への支援として、患者さん本人の病気について知ってもらうことが重要です。

実際には、上記の要素が混在している家族が多いですが、家族として高齢者の自助的なケアに責任を果たしつつ、高齢者本人への配慮や家族自らの負担を客観視しながら妥協点を探していく方法が現実主義的で理想的であると考えられます。また、入院時より、キーパーソンや決定権をもつ家族の確認・把握を行うことが重要です。


(5)多職種の視点・意見を取り入れる

 患者さんの退院後(退院先)の方針決定の際には、医学的判断とともに、本人のQOLに寄与するか否かが重要な項目となります。そのため、多職種によるカンファレンスが必要となります。治療に対する介入についても、医師とは別の視点やアウトカムを設定しているため、非常に参考となります。カンファレンスでは、各職種の立場や意見を聞くことが理想ですが、否定されることを恐れたり、他のメンバーの発言に期待して発言を控えたりすることがあるため、司会者として気を配る必要があります。司会者については、誰が行っても構わないと思いますが、個人的な経験から言うと、医師が司会者をしない方が、他職種からの意見は積極的に飛び交う事が多いので、自分は司会者をPSWや地域福祉の方(当然患者さんお事情をよく把握している方)に御願いしています。


(6)結論を急がない

 医療現場では、『なるべく早期に方針を決定しなければならない』と考えがちですが、多職種カンファレンスでは、結論を急ぎすぎると、負担が増えるばかりか、性急な合意形成を図るあまりカンファレンスの限界が露呈してしまう危険性があります。また、一時的な同意が得られても、あとでゆっくり考え直したらやっぱり同意出来ないといった意見の変更も生じやすいです。特に、高齢者や精神疾患患者さんの臨床問題には障害特性があり、時間経過によって症状が和らいだり悪化したりすることもあるため、時間をかけて方針を検討すべき事項が多くあります。そのため、カンファレンスで即座に決定するのではなく、ゆっくりと時間をかけ、評価と修正を繰り返す視点を持つことが重要です。家族や地域の方は、入院時の患者さんの印象が強いため、退院までに患者さんの状態をしっかりと伝え、理解してもらう必要があります。なるべく、病院の意見と地域・患者家族の見解に差がないようにすることが大事です。


(7)カンファレンス時に起こる注意が必要な現象

 以下の現象に気をつけながら、カンファレンスを進めて行きましょう。

集団極性化現象(group polarization:結論が極端な方向に偏る

Cautious Shift:カンファレンスの前に個々に様々であった考えが、集団でカンファレンスを行うことで、より安全性の高い保守的な結論となること。

risky shift:もともとリスクの高い少数意見がさらに先鋭的な方向となること。

集団浅慮(groupthink):合意形成に対する動機付けが最適な結論を導き出そうとする努力よりも勝った結果として、下された結論の質の低下を来すこと。

スポンサーリンク
精神科(レンタングル大)
精神科(レンタングル大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする