PSWの予診

1,予診を行うにあたって

 初めて精神科へ来られた人はとても緊張しています。精神科の受診が初めてかどうかで異なりますが、違う病院やクリニックにかかっていても、医療機関によって雰囲気も異なるため、気持ちに対する配慮が必要です。

予診を行う際ははじめに、医師の診察の前に簡単に話しを伺いたいこと”予診であること”を伝えます。初めて来られた方は、今までの経過を細かく話されたり、反対に何を話したら良いか分からず、言葉数が少なくなることがあります。

 予診では、主訴は何か一番困っていることは何かということを見極めます。精神科に来られる方はいくつもの問題が複雑に絡み合っている場合もあり、相談者自身も何に一番困っているのか気づいていないことがあります。主訴に付随してその他の困り事が発生していることは珍しくありません。予診をとりながら状況を整理する必要があります。

2,何を聞く?

ここではPSWが行う予診で聞くとよいことをあげます。そのため、医師が行う予診とは視点が異なります。項目としては次のようなものがあげられます。

①症状、いつからその症状があるのか、契機、来院経緯

受診の理由です。何か困り事があって受診に来られていると思います。その困り事は何なのか、いつから困っているのか、何かきっかけがあったのかを聞きます。

 症状の話では、話している時系列がバラバラであることがよくあります。特に具合が一番悪かったときや大変だったときの記憶が鮮明に残ります。途中まで時系列で話していても、いつのまにか具合が悪いときの話に戻っていたり、現在の状態を聞いているはずが、以前の話に変化していることもよくあります。そのため、現在話している症状はいつのことなのかということを確認しながら話を伺いましょう。


【時系列について】

患者さんは、『〇年前』、『〇ヶ月前』という言い方をします。そのままカルテに『〇年前』、『〇ヶ月前』と書くと、後からカルテを見た際に、いつの話かわからなくなります。

『〇年前』  → 平成〇年頃、

『〇ヶ月前』 → 平成〇年〇月頃

と書き換えるようにしましょう。この時、患者さんにも『平成〇年頃ですね』、『〇月頃ですね?』と聞くと確認することも出来て、より情報が正確になるのでオススメです。


 初診時には多く場合、一般科と同じように問診票が用意されています。いくつもの症状が書いてあり、それに丸をするタイプのものをよく見かけます。その問診票を元に話を切り出すのも一つの方法です。どうされましたか?など開かれた質問(open question)を投げかけてもうまく話せない方には、「はい」「いいえ」で答えることのできる閉じた質問(closed question)に問いかけ方を変えることで答えやすくなりますし、選択肢をいくつか提示することで話しやすくなります。この場合は、PSWが答えを誘導しないように気をつけることが大切です。

最近では、ネットや本で調べて、「○○(病名)だと思う」と受診に来られる方もいます。当てはまる症状があると話される場合は、具体的にどのような言動があてはまると思うのか、その人なりの困りごとや症状を聞くようにしましょう。

予診で症状について細かく聞くことは避けましょう。症状のことは診察で医師が必ず聞きます。何度も同じことを話すことは負担をかけます。伺うとしても睡眠時間や食事摂取量程度にとどめてよいでしょう。

予診のとり方(面接)

②既往歴・治療歴(身体、精神)

 精神科の治療歴だけでなく、過去の病気や現在治療している身体的な病気についても確認します。「今まで大きなけがや病気、手術をしたことがありますか?」と聞くと伝わりやすいでしょう。治療している病気がある場合は、服用している薬についても確認した方がよいと思われますが、必要であれば診察時医師が確認するので、PSWの予診で聞く必要はないです。

 また、精神科の治療歴についても、受診されるまでに他の医療機関を受診したり、公的機関に相談をされたかを確認します。相談窓口があるか、関わっている支援者がいるのかなどが分かります。

③生育歴・生活歴・学歴・職歴

 小さい頃や様子が変わる前(病前)の性格、生い立ちの中で特筆すべきことなど伺います。例えば、出生児の異常(普通分娩だったか)、学歴、職歴、両親の離婚、頻回の引っ越しなどがあげられます。

 学歴や職歴について、予診では簡単に聞くのみで構わないでしょう。学歴では、最終学歴や学生時代にいじめ・不登校などつらい体験があったか。職歴がある場合は、職種と就労期間を確認しましょう。

 話し手と聞き手の両者に余裕がある場合、学歴に関しては、学校で指摘されたこと、成績、友人関係について聞きます。また、職歴に関しては、一番長く続いた仕事、退職の理由などを聞きます。短期間でいろんな職場を転々としている場合、似たような理由で退職し、気づかないうちにそのころから症状があったということもあります。

④家族構成

 家族構成を伺う時には、結婚や離婚歴はあるか、誰と同居しているか、家族内に精神科や心療内科の受診歴がある方がいるかも同時に確認します。時間に余裕があれば、家族との関係性や性格なども聞くとよいですが、必ず聞かなくてもよいでしょう。

⑤その他

 アルコールやたばこなど嗜好品について一日の量を確認します。また、過去に覚醒剤や麻薬などの違法薬物を摂取していないかを聴取します。

予診のとり方その2

以上が主に聞く項目です。

受験・入学・卒業・失恋・結婚・離婚・就職・転職・退職などのライフイベントや転居などの環境の変化を一つの目安に聞くとよいでしょう。

 本人・家族の状態によっても聞くべき項目を考えます。切羽詰まっており、話せそうにない場合や話し出すまでに時間がかかりそうな場合は無理に聞き出す必要はないでしょう。

3,家族から聞くか、本人から聞くか

 どちらが良いということは一概に言えません。予約が必要な病院であれば、誰が予約の連絡をしてきたかが一つの目安です。家族と本人で困っていることが異なることも珍しくありません。

 特に統合失調症者は、本人が症状について否認し、本人より家族が困り受診の必要性を感じ、相談をしてこられることがよくあります。その場合、受診意思のない本人から話を聞くことは困難でしょう。

 躁状態、アルコール依存症などのアディクション、認知症なども家族から相談があることが多いです。一方で同じように家族から相談がある場合でも、パーソナリティの問題、摂食障害などは家族との関係が病気に影響していることが多いため、家族からだけでなく、本人からも話を聞く方が良いです。

本人からか、家族からか、それとも本人と家族と一緒に聞くのかはケースバイケースです。本人と家族と一緒に話を聞く場合は、本人が話しているときの家族の表情や態度、その反対に家族が話しているときの本人の表情など観察しながら話を進めていくことが必要です。

【参考文献】

相談援助職の記録の書き方:(amazon)

予診の書き方について、この本を参考にすると良いと思います。実際の記録を添削し解説されていますので、実務的にすぐ活用出来る内容になっています。解説も口語体でわかりやすいです。実習生の記録指導を含め、日常的な記録の振り返りにも使用しています。ぜひ一度読んでみてください。

4,注意

 予診は診察ではないので、時間はかけないようにしましょう。そうはいっても、聞きたい質問を順々にすることは避けたいです。会話の流れにそって聞きたい項目を聞いていくことで負荷が少なく話を進めることができますし、話しやすいです。

 予診で全て聞こうとしなくて良いです。聞き出そうとしてはいけません。予診後に診察があり、医師が約30分もしくはそれ以上、時間をかけて話しを聞きます。それはとても負担となり、疲れます。同じ事を何度も話さなくて良いよう配慮しましょう。初診で聞けなかった点については、必要であれば医師が診察を重ねながら徐々に聞いていくでしょう。

 あくまでも予診で診断ではありません。症状について、幻聴や空笑だと思っても相手の言葉をそのまま記録します。記録する際は自分のイメージに当てはめないようにしましょう。何度も予診を取ったり、様々な患者さんと関わっていると、話を聞きながら病気や病名の予想をつけていまいがちです。しかし、そのような思い込みを持って話を聞いていると、相手が話している言葉のニュアンスや意味を取り違えたり、他の困り事を見落としたりしてしまうこともあります。相手のことは何も知らないというスタンスで、客観的な事実に基づきながら全体像を聞くことが大切です。

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