ペアレントトレーニング

ペアレントトレーニングとは、保護者の方々(両親)が子どもとのより良い関わり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てが出来るように支援する保護者向けのプログラムのことです。
当初は、知的障害や発達障害のある子供をもつ保護者向けに開発されましたが、現在は子育て全般に及ぶ幅広い目的や方法で行われています。


【ペアレント・トレーニングの目的】
・親が、子どもにとってわかりやすい、具体的で効果的な対応を身につけること。子どもの行動を治すためのものではありません。
・親と子がより良い関係で家庭生活が送れるようになる。
・支援者と子どもが肯定的なコミュニケーションをすることで信頼関係を作る。
ポジティブな関わり方をすることで、親子の関係を良いものにしていき、穏やかな日常生活を送れるようにしていきます。


【ペアレントトレーニングの理論的な背景(歴史)】
1974年アメリカのUCLA神経精神医学研究所でハンス・ミラー博士によって開発されました。子育てにストレスや不安を抱える親を対象としたもので、行動療法の理論に基づいて、子どもへの適切な関わり方を指導するプログラムを行います。プログラムはADHDから出発し多様な発達障害の子どもにも役立つようになりました。

日本では、1990年代にアメリカの大学のプログラムをもとに、日本に合うように開発され広まっていきました。

【精研方式】

 アメリカで開発されたものを日本式にアレンジしたもの。国立精神・神経センター精神保健研究所で開発されたプログラム。子どもの問題行動を減らしたり親の誤った養育態度を修正することに重点を置いており、養育全般に対応する。

【肥前方式】

 肥前精神医療センターで開発。1991年から実践されている自閉症や知的障害者児の親訓練のプログラム。個別指導が充実している。

方式によって違いはありますが、プログラムは概ね以下の通りです。

日本版のプログラムは、隔週開催、1回90分、10回のセッション。
講義やグループワークで学んだことをホームワークで実践します。

セッション1  オリエンテーション・行動を3種類に分けてみよう
セッション2  肯定的な注目を与えよう・ほめ方のコツ・スペシャルタイム
セッション3  好ましくない行動を減らす① ー上手な無視の仕方ー
セッション4  好ましくない行動を減らす② ー無視とほめるの組み合わせー
セッション5  子どもの協力を増やす方法① ー効果的な指示の仕方①ー
セッション6  子どもの協力を増やす方法② ー効果的な指示の仕方②ー
セッション7  子どもの協力を増やす方法③ ーよりよい行動のためのチャート
セッション8  制限を設けるー警告とペナルティーの与え方ー
セッション9  学校・園との連携
セッション10 これまでのふりかえり



【ペアレントトレーニングの基本的考え方】
①「行動」をとらえる
子どもの性格や人格ではなく、「行動」に焦点を当てます。
『○○して優しいね』というのは性格です。そうではなく、行動に注目します。

②注目のパワーを活用する
注目は行動を強化する力を持ちます。行動に対して、褒めることも怒ることも子供にとっては注目されていると感じます。注目される行動は繰り返しますし、注目されない行動は減ります。注目されることにより行動が強化(増加)します。

③具体的で、取り組みやすい方法を手に入れる
褒めたり注目するにあたっては、具体的な行動の見方、ほめるコツ、注目の外し方、声の掛け方、効果的な指示の出し方があります。


【「行動」を知る】
・「行動」とは、「〜する」と肯定文で表せます。
・「〜しない」は行動には入れません。
・「ちゃんと」「まじめに」「しっかり」「きちんと」など曖昧な表現はせず、具体的な表現にする。
例)ちゃんと座る(抽象的) → イスに座る(具体的)

ペアレントトレーニングでは行動を3つの種類に分けます。

「行動」の種類
・好ましい行動(増やしたい行動)        :ほめる
・好ましくない行動(減らしたい行動)    :注目を外す
・許しがたい行動(なくすべき行動)        :制限を設ける

まず、行動を明確に整理し、分析します。どのような条件・状況でどのような行動が表出し、どのような結果に至ったのかを客観的に整理します。この客観的というのが難しく、頭の中で整理したつもりでもうまくできてないこともあります。
そのため、行動を言語化し、それに対しどのような声かけをし、どのような反応(結果)に至ったのかを文章にして視覚化することが望ましいです。

親が感情的にならず冷静になって、子供に対応する。日常的に関わっていたら客観的に行動をみることが難しく、自分の感情が入ってしまいます。客観的に見ながら振り返りを行います。


【ほめ方】
『やってはいけないことをする(問題行動)→怒られる→反抗や強情からまた同じことをする→また怒られる→自分はダメな子だという劣等感→問題行動』というサイクルになると、出来ていることも適切に評価できなくなります。そうすると、お互いイライラしたりしんどくなり、ストレスも増えます。

好ましくない行動ではなく、好ましい行動ばかりに目を向け、好ましい行動が出たときにほめることで好ましい行動を増やし次につなげます。できて当然、または当たり前にできるような行動も好ましい行動としてほめます。ほめることは日本人にとって苦手な行動であるため意識して行わないと褒めるタイミングを逃してしまします。

ほめ方のコツ
・タイミング     :タイミングを逃さない。行動をし始めたらすぐ。
・視線・からだ    :近づいて目線の高さで目を合わせて。
・感情・表情     :穏やかに、ほほえんで。
・メッセージ     :言葉は短く簡潔に。
行動をほめる  :具体的な行動をほめる。

・効果的なほめ方    :子どもの性格や年齢に合わせたほめ方を。みんなの前でほめられるのが好きな子、一人でこっそり静かにほめられるのが好きな子、スキンシップをしながらほめられるのが好きな子など様々です。その子に合ったほめ方をしましょう。

①皮肉は交えずに。余計な一言は不要です。
『最初からそうしてくれたらよかったのに』(皮肉)
『お兄ちゃんと同じくらいできたね』(比較)
『一番良かった』(順位)

②25%ルール
行動に対してもっとこうしたらいいと思うこともありますが、100%してから褒めるのではなく、25%で褒めることを心がけます。
「宿題をする」なら、部屋に向かうために腰を上げた時点で25%。
「着替える」ならパジャマのボタンを外した時点で25%。
そうすることでほめる機会が増えます。

③具体的に
普段ほめることに慣れていないと、いざほめるとなっても言葉のバリエーションが少ないと悩むこともよくあります。下記はほめ方の具体例です。

・ほめる        :「頑張ったね」「きれいにできたね」「はやいね」
・励ます :「もうここまで出来たの」「後少し」
・感謝する :「(行動)してくれたの。ありがとう。」
・よろこぶ・おどろく:「(行動)してくれてありがとう、うれしい。」「(行動)したの?早い!」
・スキンシップ    :そっと肩や背中に触れる。握手。
・その行動に気づいていることを知らせる:「(行動)してるね」
・興味関心を示す    :「面白そうな本だね」「何を作ったの」
・次の活動に誘う    :「おやつにしよう」「公園までかけっこしよう」
・ジェスチャー    :うなずく、手を振る、拍手


【注目を外す】
好ましくない行動に対しては注目を外します。
「子ども」を無視をするというわけではありません。「好ましくない行動」を無視します。好ましくない行動をした時は叱って注目してしまいがちですが、何もしないという姿勢で注目を外します。

注目を外すコツ
・タイミング    :好ましくない行動直後に開始
・視線・からだ    :視線を合わせない
・感情・表情    :普通で無関心。感情をださない。感情を出すと、行動に対して親が反応したと思うため、無関心となる。
・感情        :表面的には全く感情を示さない
・メッセージ    :何も言わない、素ぶりを見せない
・ほめる準備をする:好ましくない行動を止めて、好ましい行動を始めるのを観察しながら待つ。好ましい行動が出るまでには反発することもあります。反発している間は注目を外します。


【指示】
注目を外しても良い行動がでない時には指示が必要です。
効果的な「指示」とは、やるべき行動の内容を伝えることです。感情的にならず、穏やかに毅然と伝えます。

ポイントはCCQ
Caim :おだやかに
Close :近づいて
Quiet :静かな声で

子どもの注意を引き、子供との距離を縮めて目をみて(CCQ)、指示は短く、具体的かつ肯定的に伝えます。洗濯物を畳みながら、片付けながらではなく、CCQを意識して行うことが大切です。
指示を出している間も叩いてきたり、ぐずったりしますが、指示に従うまで少し時間を与え、再度指示を出すことを繰り返します。


効果的な指示の出し方
①予告し、ブロークンレコードで指示を出す。
ブロークンレコードとは「壊れたレコード」という意味で、壊れたレコードのようにひたすら同じフレーズを淡々と繰り返す方法です。
はじめに、「あと5分したら歯磨きしようね」など時間や回数を区切って予告をします。それが守れなくても好ましくない行動には反応せず、「歯磨きしようね」と繰り返します。反抗しても「歯磨きしようね」と指示します。そして、歯磨きをしに立った時にすぐにほめます(25%ルール)。

②選択させる
着替えるときに『青い服にする?黄色い服にする?』と選択肢を出します。自分に選ぶ権利があるということで気持ちよく指示に従うことができます。

③○○したら、○○できる
『おもちゃを片付けたらトランプしよう』と、おもちゃを片付けたら褒めた後に次の行動に移ります。『○○しなかったら、○○できない』という使い方はしてはいけません。

指示に従うか否かは子どもの意志であり、義務ではありません。協力してくれてありがとうぐらいの思いで行う方がイライラしないかと思います。

【さいごに】
好ましくない行動にばかり注目し、感情的に叱責すると子どもは自己肯定感が低くなり、困った子という認識がつきます。それを適切に注目することで好ましい行動が増え、双方の自信や信頼関係にもつながります。時間はかかりますが、熱意と冷静さを持って接することで良い循環に変化していきます。

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