カルニチン欠乏症

カルニチンとは?

カルニチンの化学式

カルニチンは脂肪の代謝に重要なアミノ酸です。

生体内には、遊離カルニチン(FC)とアシルカルニチン(AC)が存在し、

FC+AC=TC(総カルニチン)と呼ばれています。

カルニチンの生体内での役割は、

1)長鎖脂肪酸のミトコンドリアマトリックス内への輸送
→エネルギー代謝に重要(β酸化→ATP産生)

2)ミトコンドリア内のアシルCoA/CoA比率の調整
→遊離CoAプール維持に重要

3)アシル化合物の細胞内からの排除
→細胞毒の排除に重要

4)赤血球膜などの生体膜安定性維持
→赤血球の寿命・ターンオーバーに重要

5)酸化ストレス軽減作用
→抗炎症作用

6)アポトーシス抑制
→ 筋萎縮、心筋線維化など防止

と様々な役割を担っています。

最も重要なのは、カルニチンは、長鎖脂肪酸をミトコンドリアのマトリックス内へ輸送し、細胞のエネルギー代謝、ATP産生にとって必須のアミノ酸であることです。

カルニチンの働き

カルニチンは、必要量の75%が食事から摂取されます。体内の生合成により約25%が供給されます。体内のカルニチンのほとんどは、骨格筋などの組織中に分布し、血中には約0.6%しか存在しません。

カルニチンがなくなったらどうなる?

カルニチンは、エネルギー代謝の重要な役目を担っているため、カルニチンがなくなると様々な症状が出現します。

カルニチンが不足すると??

カルニチン欠乏症の原因

一次性

・先天性カルニチントランスポーター異常症

→全身性のカルニチン欠乏症が起こります。

二次性

①その他の先天性代謝異常症によるもの

有機酸代謝異常症、脂肪酸酸化異常症、尿素サイクル異常症、ミトコンドリア異常症など

②生合成の減少

肝硬変、慢性腎疾患、極度の低出生体重児など

③摂取の減少

長期の完全静脈栄養(TPN)、栄養不良など

③体内貯留の低下・必要量の増大

妊娠および授乳中の女性、極度の低出生体重児など

④カルニチン損失の増大

ファンコニー症候群、尿細管性アシドーシスなど

⑤医療行為が原因で起こるもの

・透析

・薬剤性

抗てんかん薬(バルプロ酸など)

抗生物質(ピボキシル基含有プロドラッグ)

→セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシルなど

カルニチン欠乏症の診断

カルニチン欠乏症が疑われる場合は、血中カルニチン検査(血液検査)を行います。遊離カルニチン濃度が<20μmol/Lの場合は『カルニチン欠乏症が発症している』、あるいは『いつカルニチン欠乏症が発症してもおかしくない状態』と診断します。

 20≦遊離カルニチン濃度<36μmol/L、あるいはアシルカルニチン/遊離カルニチン比が>0.4の場合は『カルニチン欠乏症が発症する可能性が極めて高い』と診断します。

血中カルニチン検査は、平成30年2月から酵素サイクリング法を用いた『血中カルニチン2分画検査』が保険収載されました。先天代謝異常症以外の原因で発症するカルニチン欠乏症の診断に有用です。

※先天代謝異常症によるカルニチン欠乏症を診断する場合は、『血中カルニチン2分画検査』ではなく、『タンデムマスによるカルニチンプロフィール分析』が必須となります。

【治療的診断】

疾患により、臨床症状・臨床徴候及び一般臨床検査所見があるが明確な他の原因を否定出来ず、血中カルニチン2分画検査による診断が困難な場合は、カルニチン補充を行い、臨床症状・臨床徴候の顕著な改善が認められればカルニチン欠乏症と診断します。

カルニチン欠乏症の治療

カルニチン欠乏症の治療は、レボカルニチン製剤を投与する『カルニチン補充療法』になります。

レボカルニチン製剤には、様々な剤型があります。

レボカルニチン製剤の剤型

緊急性を有する場合は高用量、あるいは場合によっては静注製剤を投与する必要があります。病態が安定した段階で、低用量に切り替えたり、静注製剤から経口剤に切り替えます。

【食事からの摂取】

カルニチンは、成人の1日の必要量の75% が食事から供給されます。ですので、食事によってある程度補うことができます。動物性食品では、肝臓で合成され筋肉に蓄積することから肉類に多く含まれています。とくにマトン、ラムなどの羊肉に多く含まれています。一方、食物性食品は、カルニチンの合成に必要なアミノ酸であるリジンとメチオニンの含量が低いので、あまり含まれていません。

食事からのカルニチンの吸収率は個人差が大きく、ベジタリアンでは雑食のヒトよりも高い吸収率が報告されています。
また、サプリメントとしてのカルニチンの吸収は、食事からの吸収されるカルニチンよりも大幅に低いことも知られています。

カルニチン含有量

カルニチンは特に赤身の肉類や乳製品に多く含まれます。ですので日常的にこうした食品の摂取が少ない人、特にタンパク質摂取制限をしている患者さん(慢性腎不全、肝硬変患者)、食思不振症患者、高齢者では欠乏しやすい傾向があります。また、医薬品の経管栄養剤やTPN、一部の牛乳アレルゲン除去調製粉乳などの治療用特殊ミルクには、カルニチンが添加されていないものが多く、これらの栄養剤のみで長期間栄養管理されている患者さんは、カルニチン欠乏症を起こすことがあるので注意が必要です。

バルプロ酸によるカルニチン欠乏症

バルプロ酸は、てんかん治療の第1選択薬のひとつで、精神科では躁うつ病の躁状態や性格行動障害(不機嫌・易怒性)の治療にしばしば使われます。また片頭痛発作の発症抑制にも使用されます。

バルプロ酸ナトリウム

バルプロ酸は通常は忍容性の高い薬剤ですが、バルプロ酸投与によってカルニチン欠乏が起こり、稀に肝毒性や高アンモニア血症による脳症を引き起こすことがあります。その機序については、①ミトコンドリアのβ酸化抑制、②小胞体(主にペルオキシソーム)のω酸化による代謝物が尿素サイクルのカルバミルリン酸合成酵素Ⅰを阻害、③バルプロ酸やその代謝物によるカルニチントランスポーターの活性阻害、 ④カルニチンの生合成酵素の阻害、⑤バルプロイルCoAが尿素サイクルの初発酵素カルバミルリン酸合成酵素Ⅰのコアファクターを合成するN-アセチルグルタミン酸合成酵素を直接阻害する、⑥カルニチンの腎尿細管での再吸収を阻害するなど複雑な過程が考えられています。

バルプロ酸の内服による肝毒性や高アンモニア血症は、カルニチン欠乏が関与しているので、その予防や治療にはカルニチン補充療法が有効です。

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精神科(レンタングル大)
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