統合失調症家族因説(家族力動説)

 統合失調症家族因説(当時は分裂病家族因説)は、家族または家族関係が統合失調症の発症原因となるという考え方で、195060年代(日本では1970年代)に多く見られました。現在のところ、統合失調症の発症に関わる特徴的な家族の型は指摘されておらず、エビデンスはありません。

 ではなぜこの誤った考え方を知る必要があるかと言うと、長年に渡り、統合失調症の子供をもつ親は、「子供が発症した原因は家庭にある、家族が悪い」などと言われ、分裂病家族因説を主張した医師・医療関係者によって辛い目に遭わされてきたという歴史があります。精神科医はそのことを自覚し、患者さん本人・御家族に対応しなければなりません。

 精神科医として重要なことは、以下の2点です。

①もし子供に統合失調症が発症したとしても、自分を責めないように両親を教育すること

②傷つきやすい統合失調症患者さんが、対処しなければならない情緒的ストレスをより一層増悪させるような家族の病的行動を見過ごさないようにすること


【知識としての統合失調症家族因説】

(1)二重拘束説

・親が子供に対して同時に矛盾する二つのメッセージを表現する。

・それを受け取った子供は、その矛盾を指摘することが出来ず、しかも何らかの応答をしなければいけない状況に陥っている。

例)子供が愛情豊かな母親に示すような反応を示すと、母は不安になり冷淡になる。母はこの不安・冷淡を自ら受け入れられず、そのことを否認し、見え透いた可愛がり方をする。子供がそれに応えないと子供から離れる。

コメント:この理論は正当性がなく、統合失調症の原因説明としては価値がありません。


(2)多世代間伝達説

夫婦は情緒的離婚状態で母子は共生的結合関係にあり、子供の心理的発達が阻害される。

・この未熟な子供がやはり未熟な相手と結婚し、その夫婦関係はさらに発展、母子関係は濃密な共生関係に陥り、子供の心理的発達はさらに阻害される。

・三世代以上にわたると統合失調症の子供が生まれる。

コメント:青字部分については、臨床の場でも当てはまると思いますが、3世代続いたら統合失調症と直結するというエビデンスはありません。


(3)偽相互性説

・相互性をもつ家族とは、家族成員が相互に自分の欲求と家族欲求を満たしてバランスがとれている状態。

・統合失調症をもつ人がいる家族では、表面的にはバランスがとれているように見えるが、家族成員個人の欲求やアイデンティティを犠牲にして成り立っている。そうした家族では、家族のみに通用する特異的な言語が発達するために、子供が家族を離れ他の人々と触れあうようになった時、その子供の言語が部外者には理解できないため、問題が表面下することがある。

コメント:抽象的概念でわかりにくいですが、この説もエビデンスはありません。


(4)母親が統合失調症を作る説

・母親は発病した子供に対して支配的、介入的

・自分と子供との自我境界がつくれず、子供の発する要求や願望の真の意味を理解できない。

・母親の言語的表現と非言語的表現との間には矛盾がある。

・父親は弱く受動的。病者との関係は希薄、時に子供に対して拒否的。

コメント:この説もエビデンスはありません。


【統合失調症家族因説の問題点】

エビデンスがない。

治療者が家族を病人扱いしてしまう。

家族の罪責感が強化され家族関係が悪化する。

・病因説が否定され家族に対する関心が低下、あるいはスタンスがわからず中途半端な態度。

・家族の要求に応えられない。

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精神科(レンタングル大)
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