精神科病院における処遇

ここでは、入院中の電話・面会・行動の制限についてご説明いたします。

これらについては、精神保健福祉法に定められています。

1.行動の制限

2.行うことができない行動制限

3.指定医の認めが必要な行動制限

4.基本理念

5.隔離

6.身体拘束

7.通信・面会について

8.任意入院者の解放処遇の制限


1.行動の制限(36条1項)

「精神科病院の管理者は、入院中の者につき、その医療又は保護に欠くことのできない限度において、必要な制限を行うことができる」

 精神科病院では、患者さんの意思によらない入院や入院中の行動の制限が認められています。これは治療に専念する環境を提供する為です。

 行動の制限は、患者さんの人権を損なわず、どのように行動制限を最小限にするかということに注意しなければなりません。


2.行うことができない行動制限(36条2項)

①信書発受の制限

  ただし、刃物や薬物などの異物が同封されていると判断される信書については、患者さんに開封してもらい、異物を取り出したうえで患者さんに渡すことは制限となりません。

  手紙を発信したり受け取ったりすることは制限されませんが、例えば、病状で、妄想の対象者に何通も手紙を郵送する患者さんがいます。その場合は退院後、生活する上で、患者さんの不利益になるため、できる限りご本人に説明し、発信を控えるよう努めることが望ましいでしょう。

②以下の電話制限

  都道府県及び地方法務局その他の人権擁護に関する行政機関の職員

   退院請求の電話などを指します。

  –患者の代理人である弁護士との電話制限

③以下の面会制限

  都道府県及び地方法務局その他の人権擁護に関する行政機関の職員

  –患者の代理人である弁護士

  –患者又は保護者の依頼により患者の代理人となろうとする弁護士


3.指定医の認めが必要な行動制限(36条3項)

①隔離

 内側から患者本人の意思で出ることができない部屋へ1人だけ入室させて、他の患者から遮断する行動の制限で、12時間を超えるもの。

 ※12時間を超えない場合は、医師であればかまいません。

②身体拘束

 衣類又は綿入り帯を使用して、一時的に身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限。上記制限を行なった場合は、診療録へ①指定医の氏名、②制限の内容、③開始・解除した年月日と時刻、④症状の記載をしなければいけません。


4.基本理念(37条1項)

・患者個人としての尊厳を尊重し、人権に配慮しつつ、適切な精神医療の確保、社会復帰の促進に資するものであること

・処遇にあたって、制限が必要とされる場合、その旨をできる限り説明して制限を行うよう努める

・制限は、患者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行わなければならない

 つまり、患者さんの人権を考え、制限が必要な場合にはできる限り説明し、その方法は最も制限の少ない方法で、制限が必要なくなれば速やかに解除しなければいけません。


5.隔離

隔離とは、

・本人又は周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く、隔離以外の方法では危険回避が著しく困難な場合に、危険を最小限にし、医療又は保護をはかることを目的として行う

制裁や懲罰あるいは見せしめのために行わない

・本人の意思で、閉鎖的環境の部屋に入室させる場合、その旨の書面を得る

  →診療録(カルテ)に入室の意思を記載してもらいます

【隔離の対象】

・他患者との関係を著しく損なう恐れがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合

・自殺企図又は自傷行為が切迫している場合

・他患者に暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為があり、他の方法では防げない場合

・急性精神運動興奮等のため、不穏、多動、爆発性などが目立ち、一般の精神病室では医療又は保護を図ることが著しく困難な場合

・身体的合併症を有する者に、検査及び処置等のため隔離が必要な場合

【隔離の遵守事項】

・一部屋に1人 

・隔離を行う理由を知らせるよう努め、隔離を行った旨・理由・開始と解除の日時を診療録へ記載する 

・定期的な観察を行う

・患者や部屋の衛生の確保に配慮する

・医師が毎日1回診察を行う


6.身体拘束

身体拘束とは、

・制限の程度が強く、二次的な身体的障害を発生する可能性もあるため、代替方法が見出されるまでのやむを得ない処置として行われる制限

【身体拘束の対象】

自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合

多動又は不穏が顕著である場合

・上記以外で精神障害のために、放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶ恐れがある場合

【遵守事項】

・身体拘束を行う理由を知らせるよう努め、拘束を行った旨・理由・開始と解除した日時を診療録へ記載する

・常時の観察を行う

・医師が頻回に診察を行う

【拘束中に発生しやすい二次的合併症】

 拘束は、身体的にも精神的にも負担がかかります。以下の合併症には細心の注意を払い、患者さんにとって不利益にならないように気をつけてください。

呼吸器系:呼吸器感染症、誤嚥性肺炎、肺血栓塞栓症

消化器系:便秘、イレウス

泌尿器科系:排尿障害、膀胱炎、尿路感染

筋・組織系:褥瘡、廃用性萎縮、関節の拘縮、末梢神経障害

循環器系:静脈血栓塞栓症


7.通信・面会について

 原則、自由に行われることが必要。

 病状により、特定の人や機関に何度も電話をして、退院後、患者さん本人の生活に不利益になる場合などは主治医や家族などの判断のもと制限を行うことができます。状態が改善されれば、速やかに制限を解除しましょう。

 電話の制限を行なった場合は、理由を診療録に記載する必要があります。

 面会も同様です。原則、立会いなく面会できるようにしますが、患者さんや面会者から希望がある場合や医療上必要な時は病院職員が立ち会うことができます。例えば、家族が患者さん本人に恐怖感を抱いていたりした場合など。


8.任意入院者の解放処遇の制限

 原則、解放的な環境での処遇(本人の求めに応じ、夜間を除き病院の出入りが自由な処遇)を受けるものとする。

 72時間以内に指定医が診察し、必要に応じて診察を行う。

 閉鎖病棟へ本人の意思で入院する場合、制限には当たらないが、本人の意思である旨の書面を得る。

 行動制限を行う中でも、患者さんの権利は守られなければなりません。そのために、医療スタッフが精神保健福祉法を正しく理解することが大切です。

 そして、常に点検する作業が必要です。医師だけでなく、看護師やコメディカルも積極的に関与し、多職種の視点から意見を出しましょう。薬物治療や環境調整、患者さんの病識獲得などが患者さんの行動制限最小化につながります。漫然と制限が行われないよう意識することが医療従事者には必要です。

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精神科(レンタングル大)
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